どうされましたか?
ケアマネさん、うちのじいさんが車にひかれて入院したよ。
利用者が交通事故にあってしまった。そんな時ケアマネはどうしたらいいでしょう。治療費は事故を起こした人が支払うとは思うけど、介護保険はどうなるのだろう。
介護保険も医療費と同じように事故を起こした人(第三者)が支払う部分が出てきます。その部分のことを過失割合と言います。そして第三者に損害賠償請求を行います。
第三者行為と介護保険
第三者行為で介護が必要になった場合は市町村に届けが必要になります。介護が重くなったときも同様ですが、この場合は今まで受けていた介護とのこれから受ける介護の差の部分を請求するという考えです。
第三者行為と市町村への届け
平成28年4月1日から、第三者行為(交通事故等)で介護サービスを受ける時は市区町村へ届出が必要となりました
○ 介護保険の被保険者の方は、交通事故などの第三者行為によって状態が悪化した場合でも介護保険サービスを受けることが出来ます。
○ ただし、介護保険サービスの提供にかかった費用は加害者が負担するのが原則ですので、市区町村が一時的に立て替えたあとで加害者へ請求することになります。
○ 市区町村が支払った介護給付が第三者行為によるものかを把握する必要があるため、平成28年4月1日から、介護保険の第1号被保険者の方が、交通事故等の第三者行為を起因として介護保険サービスを受けた場合は、届出が必要となりました。
○ 交通事故等により要介護等状態になった場合や、状態が悪化した場合は、お住まいの市区町村の介護保険部局の窓口へ届出をお願いします。
第三者行為とは
第三者行為とは何でしょうか。第三者行為に該当する場合としない場合があります。ケアマネ業務では特別に書類を出すようなことはありませんが、事故などに巻き込まれたご家族は分からないことも多く不安だと思います。第三者行為についてケアマネが少しでも知っていることで安心していただけますね。
第三者行為
自分が原因でないケガや病気が第三者行為と言われるものです。下記のような場合になります。
- 建物・施設などの設備の欠陥でけがをしたとき
- 他人の飼い犬やペットなどにより、けがをしたとき
- 不当な暴力や傷害行為を受け、けがをしたとき
- 飲食店などで食中毒にあったとき
第三者行為にならないこと
- 業務上の事故で労災保険の対象になるとき
- 故意に起こした事故、犯罪
- 飲酒運転など法律を守らなかった事故
- 泥酔やケンカでケガをした場合
第三者行為による事故の示談について
まず、示談は簡単にしないことです。後遺症が後から出てきたときに健康保険が使えないという事態になる場合があります。また示談が成立すると、国民健康保険が支払った医療費を加害者に請求できなくなることがあります。示談を考えている場合、健康保険組合に相談してみましょう。
第三者行為求償の流れ
※介護事業所の部分を医療機関に置き換えても同様の仕組みになります。
保険者に提出する用紙
① 第三者行為による被害の届出書(医療保険における「第三者行為による傷病届」と同様のもの)を被害者である第1号被保険者から提出して頂きます。
また、上記に加え、必要に応じて
② 同意書
③ 事故発生状況報告書
④ 交通事故証明書
交通事故後のケアマネジメント
介護保険の請求事務的には通常の動きと同じです。ただ、第三者行為求償の全体の流れをしらないと保険者に事故があったことを知らせていないことで怒られたり、家族が不安になったりするので、ざっと把握しておきましょう。
- 利用者家族から交通事故で入院したと知らせを受けた。
- 利用者の状態が悪化したことを確認。
- 保険者に事故にあったことで介護の負担が重くなることを連絡。
- 区分変更申請を行う。
- できれば、主治医意見書に「第三者行為」であることの記載が必要と伝える。
- 退院日が決まり、退院後のサービスが発生する日を保険者に連絡。(保険者は利用者家族に被害届を出してもらう)
その後、保険者は第三者にかわって立替払いを行います。事故の保険金の決定は時間がかかるためです。
実際に利用者さんが交通事故にあって思うこと
交通事故にあって退院される方の援助を行ったことはありますが、担当している利用者さんが交通事故にあったのは初めてでした。担当ケアマネに連絡がきたのは事故の翌日、命はとりとめたもののご家族は動転されていました。「第三者行為」にあたることは知っていたので保険者に連絡、その後保険者からご家族に連絡が入り届け出を行ったそうです。保険者にケアマネから問い合わせると通常の流れでケアマネ業務を行うように言われました。
そして退院された
在宅で過ごされていた利用者さんは事故のため施設での生活が必要になりました。区分変更を行い、介護度は2段階重くなっていました。運よくショートステイが見つかり退院と同時に入所することができよかったです。負担限度額の手続きも通常通り行っています。通院はショートステイが送迎し、ご家族が付き添いです。病院の支払いは交通事故に関係する部分は支払いが分かれご家族は払っていないと話されました。
事故から1年経ちます
ケアマネのもとに保険者から連絡、国保連との話し合いがあるので資料を用意してほしいと言われ、事故前からの支援経過・計画書等のコピーを市役所に提出しています。国保連との話し合いはご家族・保険者・国保連・後期高齢者医療保険・ケアマネが参加しています。利用者さんの状態が安定してきたので第三者が払う割合の確定が近いためご家族への説明が行われたとのことでした。
まとめ
利用者が交通事故などの第三者行為でケガや病気になったときは、まず保険者に連絡して指示に従いましょう。第三者行為の届は書類が多いので、家族は事故の対応で大変になっているうえに書類や保険会社とのやり取りで疲れています。ケアマネは通常の動きでいいのですが、第三者行為の流れを知っていると動きやすいと思われます。