2024年、また介護保険制度の改正が実施されました。この改正は、急速に高齢化が進む日本において、持続可能な介護サービスの提供を目指すための重要なステップのため同一建物に居住する利用者へのケアマネジメントの 減算が行われました。実際の算定で悩まれている方も多いと思われれるので、わかりやすく解説しました。
2024年介護保険改正とは？
この改正は、高齢者が集中的に居住する建物でのケアマネジメントが効率的なサービス提供が可能であると判断されました。たとえ同じ敷地の集合住宅でも利用者さんはそれぞれ違う状況にいます。集合住宅であっても利用者さんの状態により大変な手間がかかることがあります。同一建物等に居住する利用者に対するケアマネジメント費用の一部が削減されることになりましたが、楽していると思われるのは辛いです。一度減算の算定をしてしまうと後から翻りにくいので慎重に行いましょう。
単位数：同一建物に居住する利用者へのケアマネジメント所定単位数の95％を算定（新設） 2024介護保険改正の概要
同一建物等居住者へのケアマネジメント減算の詳細
減算の内容を見ていきましょう。2024年の介護保険改正では、同一建物等に居住する複数の利用者に対するケアマネジメント費用の減算が導入されました。
算定要件：対象となる利用者・指定居宅介護支援事業所の所在する建物と同一の敷地内、又は指定居宅介護支援事業所と同一の建物に居住する利用者・指定居宅介護支援事業所における１月当たりの利用者が同一の建物に20人以上居住する建物（上記を除く。）に居住する利用者
この減算は、高齢者専用の住宅やサービス付き高齢者向け住宅（サ高住）などが対象となります。指定居宅支援事業所単位なので1人のケアマネが20人担当など多い人数を担当するのでなければ、手間のかかり方は変わらず減算の意味が薄いように思われます。
減算の影響：利用者さんとケアマネージャーの視点から
同一建物等居住者へのケアマネジメント費用減算は、利用者さんとケアマネージャーの双方に影響を与えます。利用者さんにとっては、減算によって料金が少し安くなるのですが、ケアマネと同じ建物だから・集合住宅だから安くしていいというのでは、ケアマネジメントの質が低下するのではないかという心配があるかもしれません。一方でこの改正は、ケアマネージャーにとっては、減算による収入減少が懸念されます。しかし、同時にケアマネージャーは複数の利用者に対して効率的にサービスを提供することが求められ、よくいえばスキルアップが進む可能性もあります。
減算への対策と今後のケアプランのポイント
同一建物等居住者へのケアマネジメント費用減算に対する対策として、ケアマネージャーは以下のポイントに注意する必要があります。
概要：介護報酬が業務に要する手間・コストを評価するものであることを踏まえ、利用者が居宅介護支援事業所と併設・隣接しているサービス付き高齢者向け住宅等に入居している場合や、複数の利用者が同一の建物に入居している場合には、介護支援専門員の業務の実態を踏まえた評価となるよう見直しを行う。【告示改正】
まず、複数の利用者に対するケアプランを効率的に管理するために、IT技術の導入が有効です。例えば、ケアプラン作成ソフトを活用することで、情報共有や業務効率化が図れます。また、利用者のニーズに応じた個別対応を重視することも重要です。同一建物等に居住する利用者さんでも、それぞれの健康状態や生活環境は異なるため、個々の状況に応じたケアプランを作成することが求められます。
今後の介護保険制度の展望と課題
2024年の介護保険改正は、日本の介護サービスの質と持続可能性も大切ですが、今後も課題が残されています。高齢化が進む中で、介護サービスの需要はますます増加していくと予測されます。ケアマネも介護職員も高齢化と人材不足が懸念されます。制度改正は、今後も見直しや調整が必要となるでしょう。さらに、地域包括ケアシステムの強化や在宅介護の推進など、多様な介護サービスの提供体制を整えることが求められます。
ローカルルールについて
厚労省もローカルルールに悩むケアマネに理解を示してくれた内容でした。
概要【全サービス】○ 都道府県及び市町村に対して、人員配置基準に係るいわゆるローカルルールについて、あくまでも厚生労働省令に従う範囲内で地域の実情に応じた内容とする必要があること、事業者から説明を求められた場合には当該地域における当該ルールの必要性を説明できるようにすること等を求める。【Q&A発出】
同一建物等居住者へのケアマネジメント費用減算の解釈
隣接する敷地内の建物がどこまでなのか。いざ算定しようとすると迷いが出ます。市町村が判断するところですが即答できない場合も多くあります。いわき市からの回答を載せておきます。
いわき市 同一敷地内建物等とは当該指定居宅介護支援事業所と構造上又は外形上、一体的な建築物及び同一敷地内並びに隣接する敷地（当該指定居宅介護支援事業所と建築物が道路等を挟んで設置している場合を含む。）にある建築物のうち効率的なサービス提供が可能なもの
該当例 〇 一体的な建築物として、当該建物の１階部分に指定居宅介護支援事業所がある該当例該当しない例
〇 渡り廊下でつながっている
〇 同一の敷地内若しくは隣接する敷地内の建物として、同一敷地内にある別棟の建築物や幅員の狭い道路を挟んで隣接する
該当しない例 〇 同一敷地であっても、広大な敷地に複数の建物が点在する
〇 隣接する敷地であっても、道路や河川などに敷地が隔てられており、横断するために迂回しなければならない
いわき市のページから引用
まとめ
2024年に日本の介護保険制度が改正され、同一建物に居住する利用者へのケアマネジメント費用が削減されました。これは、効率的なサービス提供が可能と判断されたためですが、ケアマネジメントの効率を追求すればケアの質が低下する懸念もあります。ケアマネージャーは収入減少が予想される一方、複数の利用者に平等にサービスを提供するスキルが求められます。IT技術の導入や個別対応の強化が今後の対策として重要となり、介護保険制度の見直しと地域包括ケアシステムの強化が求められています。
