令和3年度の介護報酬改定がありました。口腔機能向上加算について
少し分かりにくいので記事にしました。
口腔機能が向上すると何がいいのか
居宅のケアマネを悩ませるものにリハビリ系の加算があります。リハビリすることがいいことなのは分かっていますが、算定要件の理解が難しくて間違いやすいのです。令和3年の介護報酬の改定で分かりにくかった「口腔機能向上加算」を解説していきます。
そもそも、なんで口腔ケアをしなければならないのか
居宅ケアマネがモニタリングで訪問すると普段の飾りっ気のない利用者さんの生活を見ることができます。若いころから口腔ケアの習慣がついていると高齢であっても口の中は清潔です。口腔ケアをするということは、口の中をきれいにすることも大切ですが、むし歯などの病気を予防したり、飲み込みなどの機能を維持することです。飲み込みの機能が低下すると本人が分からないうちに口の中の水分や食べ物などが誤嚥によって肺に入り込み、肺で細菌が繁殖して肺炎になってしまいます。高齢者に起こる肺炎は、誤嚥性肺炎が多いと言われています。
誤嚥性肺炎を起こしてしまうと
普段通りの生活ができて一見元気な高齢者も突然肺炎を起こすことがありますね。口腔機能を維持していくことで誤嚥性肺炎の予防となります。誤嚥性肺炎になってしまうと臥床生活が長くなることで認知症や運動機能の低下にまで影響が及びます。寝たきり状態のきっかけにもなることを理解して高齢者の援助に役立てたいですね。
口腔機能と高齢者の健康
近年、口腔内の細菌が糖尿病や脳卒中などの全身の健康にかかわることが分かってきました。また、咀嚼や嚥下が老化や認知症に関連しているなどということも分かってきています。高齢者が毎日の口腔ケアを行なわないとむし歯や歯周病が発生して口の中の細菌が増えることで、敗血症や虚血性心疾患、誤嚥性肺炎を引き起こすことになります。若い人であれば問題ない細菌も高齢者には命取りになる病気のきっかけになります。
介護者としての口腔ケア
高齢者施設や自宅での口腔ケアは、食事の後に歯の汚れを落とすためでなく、全身にかかわる病気の予防、生活の質の維持にもなる行為です。利用者様の口腔ケアにかかわるときは、2021年の介護報酬改定で栄養・口腔スクリーニング加算や口腔機能向上加算のための記録を有効に使いましょう。
2021年介護報酬改定、口腔機能向上加算について
通所介護、地域密着型通所介護、認知症対応型通所介護、通所リハビリテーション、小規模多機能型居宅介護、看護小規模多機能型居宅介護、特定施設入居者生活介護、地域密着型特定施設入居者生活介護、認知症対応型共同生活介護のサービスについて、利用者の口腔機能低下を早期に確認し、適切な管理等を行うことにより、口腔機能低下の重症化等の予防、維持、回復等につなげる観点から、介護職員等が実施可能な口腔スクリーニングを評価する加算が創設されました。その際、栄養スクリーニング加算による取組・評価と一体的に行うことになりました。
新設 口腔・栄養スクリーニング加算(Ⅰ)(Ⅱ)
5単位/回の「栄養スクリーニング加算」は廃止となりました。
口腔・栄養スクリーニング加算(Ⅰ)
口腔・栄養スクリーニング加算(Ⅰ)20単位/回(新設) (※6月に1回を限度)
介護サービス事業所の従業者が、利用開始時及び利用中6月ごとに利用者の口腔の健康状態及び栄養状態について確認を行い、当該情報を利用者を担当する介護支援専門員に提供していること(※栄養アセスメント加算、栄養改善加算及び口腔機能向上加算との併算定不可)が必要です。
口腔・栄養スクリーニング加算(Ⅱ)
口腔・栄養スクリーニング加算(Ⅱ)5単位/回(新設) (※6月に1回を限度)
利用者が、栄養改善加算や口腔機能向上加算を算定している場合に、口腔の健康状態と栄養状態のいずれかの確認を行い、当該情報を利用者を担当する介護支援専門員に提供していること(※栄養アセスメント加算、栄養改善加算又は口腔機能向上加算を算定しており加算(Ⅰ)を算定できない場合にのみ算定可能)です。
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000755018.pdf
新設 口腔機能向上加算Ⅱとは
(現行)口腔機能向上加算 150単位/回 ⇒ 口腔機能向上加算(Ⅰ) 150単位/回(現行の口腔機能向上加算と同様)
口腔機能向上加算(Ⅱ) 160単位/回(新設)(※原則3月以内、月2回を限度)
(※(Ⅰ)と(Ⅱ)は併算定不可)
口腔機能向上加算(Ⅰ)に加え、利用者ごとの口腔機能改善管理指導計画等の内容等の情報を厚生労働省に提出(LIFE活用)し、サービスで得た口腔機能情報や口腔衛生の管理実施のために必要な情報を活用していること。(PDCAサイクルの運用)
原則3月以内、月2回限度。3ヶ月毎に口腔機能の評価をし、サービス継続が必要な利用者様には引き続き行う。
モニタリングの実施
- サービス担当者は、目標の達成状況、口腔衛生、摂食・嚥下機能等の改善状況等をモニタリングし、評価を行うとともに、サービスの見直し事項を含めた口腔機能改善管理指導計画の変更の必要性を判断します。モニタリングの記録は、別紙様式8の様式例を参照の上、作成します。
- モニタリングは、口腔機能改善管理指導計画に基づき、概ね1か月毎に適宜行います。
サービス担当者は、口腔衛生、摂食・嚥下機能等に関する解決すべき課題の把握を3か月毎に実施し、事業所を通じて利用者を担当する介護支援専門員又は介護予防支援事業者等へ情報を提供します。なお、この把握には、別紙様式8の様式例を参照の上、作成します。
介護支援専門員又は介護予防支援事業者等は、情報提供を受けてサービス担当者と連携して、口腔衛生、摂食・嚥下機能等に関するリスクにかかわらず、把握を3か月毎に実施する。 - 口腔機能向上サービスの継続及び終了時の説明等
サービス担当者は、総合的な評価を行い、口腔機能向上サービスの継続又は終了の場合には、その結果を利用者又はその家族に説明するとともに、利用者を担当する介護支援専門員又は介護予防支援事業者等に継続又は終了の情報を提供し、サービスを継続又は終了する。サービスの継続又は終了については、利用者又はその家族へ説明し同意を得ます。
評価の結果、改善等により終了する場合は、関連職種や居宅サービス事業所又は介護予防サービス事業所との連携を図ります。また、評価において医療が必要であると考えられる場合は、主治の医師又は主治の歯科医師、介護支援専門員若しくは介護予防支援事業者並びに関係機関(その他の居宅サービス事業所等)との連携を図ります。
口腔機能向上加算を算定できない場合
- 口腔機能向上サービスの対象にならない利用者
- 医療保険において歯科診療報酬点数表に掲げる摂食機能療法を算定している者
- 複数の事業所を利用しており、他の事業所で口腔機能向上加算を算定している者
- 口腔機能向上加算の算定に対して、同意を得られない者
特に算定できる事業所が多いので、どこの事業所が口腔機能向上加算を算定するのかをケアマネが把握しなければなりません。また、費用が高くなることから算定の同意を得られないこともありました。いずれも情報収集や分かりやすい説明の上で行いましょう。
口腔機能向上加算を算定するにあたり
口腔機能向上は高齢者にとってとても大切なリハビリになると考えています。加算を算定する事業所は利用者がどのような内容の歯科医療や介護サービスを受けているか、利用者本人・家族等・ケアマネジャーとの情報交換に努める必要があります。また、上記の算定できない場合で算定してしまうと返戻となります。
まとめ
・令和3年度の介護報酬改定、口腔機能向上加算の算定要件を調べました。算定できる事業所が多いのでケアマネは注意が必要ですね。
・口腔機能が向上すると誤嚥性肺炎のリスクが減ります。その他にも口の中の細菌が増えることで、敗血症や虚血性心疾患などの病気の可能性があるので、口腔ケアは大切です。
・口腔機能低下の重症化等の予防、維持、回復等につなげる観点から、介護職員等が実施可能な口腔スクリーニングを評価する加算が創設されました。その際、栄養スクリーニング加算による取組・評価と一体的に行うことになったので、栄養スクリーニング加算は廃止となりました。
・口腔・栄養スクリーニング加算が新設され、ⅠとⅡが6ヶ月に1回算定できます。
・現行の口腔機能向上加算(Ⅰ) 150単位に加え(Ⅱ)160単位が新設されました。モニタリングの記録を残すことが必要になります。
・口腔機能向上加算が算定できない場合があります注意しましょう。
2021年10月 通所リハビリのリハビリテーションマネジメント加算についてはこちらの記事をみてください。