急にショートステイを利用したいです。
プランにはありません。
そんな時に「緊急短期入所受入加算」が算定されます。
詳しく見ていきましょう。
緊急短期入所受入加算とは
緊急短期入所受入加算の歴史 平成24年 介護保険改定
分かりにくい加算を調べる時はその加算が発生・変化してきた歴史を知ると理解が深まります。平成24年に緊急時のショートステイへの受入れを促進する観点から、緊急短期入所ネットワーク加算を廃止し、居宅サービス計画に位置付けられていない緊急利用者の受入れについて評価を行うことになった。
緊急短期入所受入加算とは、ショートステイや介護老人保健施設へ利用者やその家族の事情により緊急でケアプランのない入所の受入を行うことを評価する加算です。
緊急短期入所ネットワーク加算 ⇒ 廃止
↓
緊急短期入所受入加算(新規) ⇒ 90 単位/日
算定要件
・ 利用者の状態や家族の事情等により、介護支援専門員が、短期入所療養介護を受ける必要があると認めていること。
・ 居宅サービス計画において計画的に行うこととなっていない短期入所療養介護を行っていること。
・ 利用を開始した日から起算して、7 日を算定の限度とすること。
緊急短期入所受入加算 詳細
何が緊急短期入所受入加算に当たるのか、詳細を転記しておきます。
ア 緊急短期入所受入加算は、緊急短期入所体制確保加算を算定している事業所で、緊急利用枠に緊急利用者を受け入れたときに、当該緊急利用者のみ加算する。
イ 「緊急利用者」とは、介護を行う者が疾病にかかっていることその他やむを得ない理由により居宅で介護を受けることができない、かつ、居宅サービス計画において当該日に利用することが計画されていない者をいう。なお、新規の利用者に限られるものではなく、既に当該事業所で緊急短期入所受入加算の算定実績のある利用者も算定対象となるものである。
ウ あらかじめ、担当する指定居宅介護支援事業所の介護支援専門員が緊急の必要性及び利用を認めていること。ただし、やむを得ない事情により、事後に介護支援専門員により当該サービス提供が必要であったと判断された場合には、加算の算定は可能である。
エ 本加算は、緊急利用枠以外の空床が既に利用されていることを要件としているが、例えば、緊急利用枠以外の空床はあるが、緊急利用者の希望する利用日数の関係又は男女部屋の関係から当該空床を利用することができないなど、やむを得ない事情がある場合には緊急利用枠の利用が可能であり、当該加算を算定できるものとする。
オ 緊急利用した者に関する利用の理由、期間、緊急受入れ後の対応などの事項を記録しておくこと。また、緊急利用者にかかる変更前後の居宅サービス計画を保存するなどして、適正な緊急利用に努めること。
カ 既に緊急利用者を受け入れているために緊急の利用を希望している者を受け入れることが困難な場合は、利用希望者に対し、別の事業所を紹介するなど適切な対応を行うこと。
キ 本加算の算定対象期間は原則として七日以内とし、その間に緊急受入れ後に適切な介護を受けられるための方策について、担当する指定居宅介護支援事業所の介護支援専門員と密接な連携を行い、相談すること。ただし、利用者の介護を行う家族等の疾病が当初の予想を超えて長期間に及んだことにより在宅への復帰が困難となったこと等やむを得ない事情により、七日以内に適切な方策が立てられない場合には、その状況を記録した上で十四日を限度に引き続き加算を算定することができる。その場合であっても、利用者負担軽減に配慮する観点から、機械的に加算算定を継続するのではなく、随時、適切なアセスメントによる代替手段の確保等について、十分に検討すること。
指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(短期入所サービス及び特定施設入居者生活介護に係る部分)及び指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準の制定に伴う実施上の留意事項について(平成12年3月8日老企第40号 厚生省老人保健福祉局企画課長通
知)https://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/housyu/dl/c02.pdf#page=19
令和3年 介護保険改定 緊急短期入所受入加算
令和3年の介護保険改定において、認知症グループホーム、短期療養、多機能系サービスにおいて、緊急時の宿泊ニーズに対応する観点から、緊急時短期利用の受入日数や人数の要件等を見直すことになりました。
緊急短期入所受入加算の変更点
認知症グループホーム
認知症グループホームの緊急入所は「緊急時短期利用」と言います。
〔人数〕
(現行)1事業所1名まで
↓
(改定後)1ユニット1名まで
〔日数〕
(現行)7日以内
↓
(改定後)7日以内を原則として、利用者家族の疾病等やむを得ない事情がある場合には14日以内
〔部屋〕
(現行)個室
↓
(改定後)「おおむね7.43㎡/人でプライバシーの確保に配慮した個室的なしつらえ」が確保される場合には、個室以外も認める。
短期入所療養介護
〔日数〕
(現行)7日以内
↓
(改定後)7日以内を原則として、利用者家族の疾病等やむを得ない事情がある場合には14日以内
小規模多機能型居宅介護、看護小規模多機能型居宅介護
小規模多機能型居宅介護や看護小規模多機能型居宅介護の場合は「短期利用居宅介護費」と言います。事業所の登録定員に空きがあること等を要件とする登録者以外の短期利用(短期利用居宅介護費)について、登録者のサービス提供に支障がないことを前提に、宿泊室に空きがある場合には算定可能とします。
令和3年度介護報酬改定の主な事項についてhttps://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000753776.pdf#page=16
緊急短期入所受入加算を算定できる施設
- 短期入所生活介護
- 短期入所療養介護
緊急時の円滑な受入れを促進する観点から、一定割合の空床を確保している事業所の体制(短期入所生活介護のみ)や、緊急時の受入の評価を行います。
①短期入所生活介護 緊急短期入所受入加算
⇒90単位/日
②短期入所療養介護 緊急短期入所受入加算
⇒ 90単位/日
緊急短期入所受入加算のケアプラン
緊急短期入所受入加算の緊急とは
緊急短期入所受入加算とは、短期入所生活介護、短期入所療養介護において、利用者やその家族の状況に合わせ、ケアプランにおいて利用計画のない利用者を緊急で受け入れすることを評価する加算です。では、「緊急」とはどういうことでしょうか?
十七 指定居宅サービス介護給付費単位数表の短期入所生活介護費の注10の厚生労働大臣が定める者
次のいずれにも適合している者
イ 利用者の状態や家族等の事情により、指定居宅介護支援事業所の介護支援専門員が、緊急に指定短期入所生活介護(指定居宅サービス等基準第百二十条に規定する指定短期入所生活介護をいう。ロにおいて同じ。)を受けることが必要と認めた者
ロ 現に利用定員の百分の九十五に相当する数の利用者に対応している指定短期入所生活介護事業所(指定居宅サービス等基準第百二十一条に規定する指定短期入所生活介護事業所をいう。)において、緊急に指定短期入所生活介護を受ける必要がある者
上記のイにより、利用者を担当している居宅の介護支援専門員が、利用者の状態や家族の事情を検討した結果、ただちにショートステイに宿泊必要があると認めた場合ということです。
例としては、自宅で一人では生活できない利用者の家族が急病のため入院してしまった場合などが当てはまります。
緊急短期入所受入加算のケアプラン
緊急短期入所受入加算の「ケアプランにおいて利用計画のない利用者」とは、いったいどういう場合でしょうか?
居宅サービス計画において計画的に行うこととなっていない短期入所生活介護を緊急的に行う場合を評価する「緊急短期入所受入加算」については、要件を緩和し、評価を引き上げる。
○ ケアプランにおいて当該日に利用することが計画されていない利用者を緊急的に受け入れることを評価する「緊急短期入所受入加算」については、100分の5の緊急確保枠以外の空床利用者は算定不可。
以上の書き方から、緊急に短期入所をしたい日に利用の予定が入っていない場合は緊急の入所となります。利用計画書の第2票にショートステイの計画があったとしても、今日利用したい「今日」に利用の予定がなければ、緊急の扱いになります。緊急で利用者を受け入れることになった施設の手間を考えると納得です。
緊急短期入所受入加算の担当者会議
急な受け入れが起こるとき、緊急入所できる施設を見つけて施設へ情報提供を行い、契約は誰がするのか、薬は何日分あるのか、独歩で歩行できるのか車椅子なのか、担当者会議はどうするのかなど様々な調整を一気に行う必要が出てきます。特に担当者会議は入所することによって利用中止になるサービス事業所に情報提供するとともに担当者会議の照会を行います。
短期入所生活介護等における緊急時のサービスの提供状況に関する調査https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000034lq4-att/2r98520000034m7b_1.pdf
緊急短期入所受入加算の留意事項
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対象者は新規の利用者に限らず、すでに利用している利用者も算定の対象となります。
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緊急短期入所受入加算の算定は、原則として受け入れた日から起算して7日以内となるが、やむを得ない事情により、受け入れた日から起算して7日以内に適切な介護の方策が立てられない場合は、14日を限度に算定することができます。
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認知症行動・心理症状緊急対応加算を算定している場合、緊急短期入所受入加算を算定できません。
一番最初の「対象者は新規の利用者に限らず、すでに利用している利用者も算定の対象となります。」というのは初めてその施設を利用する場合に限らず、何回か利用している施設であっても緊急短期入所受入加算を算定できるということです。
緊急短期入所受入加算 Q&A
緊急短期入所受入加算のQ&Aを載せておきます。
問 91 当初から居宅サービス計画に位置づけて予定どおり利用している利用者について、家族等の事情により急遽、緊急的に延長した場合に緊急短期入所受入加算は算定できるか。
(答)
算定できない。問 92 特養の空床利用部分と併設部分がある事業所において、利用者が当初、併設部分を緊急利用して緊急短期入所受入加算を算定していたが、事業所内の調整で空床部分のベッドに移動した場合、当該加算は引続き算定できるのか。
(答)
空床部分の利用者は、緊急短期入所体制(受入)加算の対象とはならないので、空床部分に移動した日後において当該加算は算定できない。なお、移動日は併設部分にいるので、当該加算は算定可能である。問 93 緊急短期入所受入加算ついて、緊急利用枠以外の空床がある場合は算定できないこととされているが、老企 40(13)②エに「例えば、緊急利用枠以外の空床はあるが、緊急利用者の希望する利用日数の関係又は男女部屋の関係から当該空床を利用することができないなど、やむを得ない事情がある場合には緊急利用枠の利用が可能」とされたが、やむを得ない事情とは具体的にどのような場合なのか。
(答)
例①:男女部屋の関係から空床利用枠を利用することができないケース利用定員が 20 床の短期入所生活介護事業所(緊急確保枠はその 5%の 1 床=20 床目)で、18 床の利用があった。19 床目が多床室の男性部屋で 20 床目が女性部屋の場合、緊急利用者が女性だとしたら 19 床目は利用出来ず 20 床目を利用することになるので、緊急短期入所受入加算が算定可能となる。なお、当該事業所の 19 床目が空いているが、これは緊急利用枠以外のベッドとなり、緊急利用枠(20 床目)は既に利用されているので、19 床目の利用者は利用の理由如何を問わず、受入加算は算定できない。
例②:利用日数の関係から空床利用枠を利用することができないケース4/1 に緊急利用枠以外の空床があり、4/2 に緊急利用枠以外に空床がない場合において、緊急利用者を 4/1 に受け入れた場合、緊急利用期間が 1 日のみの場合、緊急利用枠以外の空床が利用可能であることから受入加算の算定はできない。一方、緊急利用期間が 2 日以上の場合は、利用日数の関係により 4/2 に緊急利用枠以外の空床を利用できないことから、4/1 から緊急利用枠を利用することにより受入加算を算定 できる。問 94 緊急短期入所受入加算を算定している緊急利用者が、当該加算算定期間満了後も退所せず、引き続き緊急利用枠の同一ベッドを利用している場合、どのように緊急利用枠を確保すればよいのか。
(答)
当該事業所の緊急利用枠が、算定期間の満了した緊急利用者が引き続き利用している等の理由により、緊急利用枠として利用できない場合、当該緊急利用枠以外の新たなベッドを緊急利用枠として確保することにより、別の緊急利用者に対して当該加算の算定が可能である。この場合、あらかじめ確保していた緊急利用枠は、通常の空床枠と同じ取扱いになる。問 95 緊急利用枠を 4/5 から 4/19 に確保している事業所において、4/19 に緊急利用枠を利用した場合、緊急短期入所受入加算は何日間算定できるのか。
(答)
4/19 に緊急利用者として緊急利用枠を利用した場合、4/20 以降が緊急利用枠を確保している期間ではなかったとしても、引き続き当該事業所を利用している場合においては、7 日間を限度として緊急短期入所受入加算の算定ができる。問 96 緊急短期入所受入加算を算定している者の緊急利用期間が月をまたいだ場合はどのように取り扱うのか。
(答)
緊急利用期間が月をまたいだ場合であっても、通算して 7 日を限度として算定可能である。なお、この場合において、引き続き緊急利用枠を利用している場合に限り、翌月も緊急短期入所受入加算の算定実績に含めて差し支えない。問 99 緊急短期入所受入加算を算定している者の緊急利用期間が月をまたいだ場合はどのように取り扱うのか。
(答)
緊急利用期間が月をまたいだ場合であっても、通算して7日を限度として算定可能である。問 100 当初から居宅サービス計画に位置づけて予定どおり利用している利用者について、家族等の事情により急遽、緊急的に延長した場合に緊急短期入所受入加算は算定できるのか。
(答)
算定できない。
平成24年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1)
(平成 24 年 3 月 16 日)https://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/housyu/dl/qa01b.pdf#page=41
まとめ
居宅のケアマネジャーの仕事に就いていると度々経験するのが緊急短期入所です。その緊急が週末の夕方に起こるとショートステイに電話しても相談員が不在、いても当日の受入れができないと言われ、親戚の方に月曜日まで面倒をみていただくしかない状況になったこともあります。また、緊急で入所できる場合も(この時点で複数の施設に問い合わせを入れて精神的に消耗している)情報を施設に入れ、必要な持ち物を集め、薬の残数を数えて他のサービス事業所と情報を共有するなど仕事は山積みです。
緊急の短期入所を行う場合の算定要件、令和3年の介護保険の改定で変わった点、ケアマネジャーが悩む点から「緊急とは何か」「利用計画がないとはどういうことか」「担当者会議などどうするのか」「算定のQ&A」についてを書きました。根拠も必要と思われるので、詳細が分かるリンクを貼っておきました。